まだ見ぬ誰かへ


1977年全米公開、78年日本公開のSF映画「スターウォーズ」は私にとって間違いなく人生の大きな柱の一つです。小学6年生でした。当時神戸の実家に居候していた叔父が映画好きでした。雑誌「ロードショー」が部屋にあって、よく借りて読んでいました。ある日その叔父が興奮して「すごい映画がくる」と教えてくれました。それがスターウォーズでした。映画館には叔父に連れて行ってもらいました。神戸国際会館の前にあったマクドナルド(当時はまだ日本に進出したばかり)で飲んだコーラ。入場を待って並んだ列。暗い場内は立ち見もできていました。暗転した映画館のスクリーンに星が浮かぶと、そこは宇宙空間になりました。そしてあの巨大な宇宙船スターデストロイヤーの登場。全てが鮮明な記憶です。

来年公開50周年を迎える偉大な映画スターウォーズの祭典が17年ぶりに日本で開催されました。スターウォーズ・セレブレーションです。幕張メッセを全面的に使った巨大なイベントです。世界125カ国10万人のスターウォーズファンが集結しました。私もその一人として初めて参加することができました。2年前に開催が発表され、チケット発売は去年。VIPチケットは争奪戦となり即完売。私は何とか通常の3日通し券を確保し、この日を本当に楽しみに過ごしてきたのです。ものすごく刺激的な体験でした。何回かに分けてこのブログで語っていきます。今回は「おみやげ交換」についてです。

セレブレーションとは

SNSやネットを通じてセレブレーションの情報を集めました。初めての参加で、その実態はよくわかっていませんでした。知っていたのは、スターウォーズファンであれば一生に一度は参加するべきイベントで、開催中には出演俳優や監督、プロデューサー、クリエーターが出てきて交流もできる。様々なグッズが販売され、映画で使われた小道具なども展示。何よりコスプレを楽しむファンらとの交流が楽しい。という程度でしょうか。17年前の日本開催では今のようにSNSもありませんでした。日本においては本当にマニアックなイベントでした。私もイベントを知ってはいたものの仕事が忙しかったこともあり参加できませんでした。この時にはルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミルさんが登場しました。そのニュースを見て無理してでも行けばよかったと後悔したのを覚えています。

SWAG

調べる中で出てきたのが「SWAG」です。日本のSNSコミュニティではほとんど触れられていませんでした。アメリカをベースにした海外のSNSでは開催が近づくと頻繁にステッカーやワッペンなどの写真とともに「SWAG」という文字が出てきます。デザインされているのはスターウォーズをテーマにしたイラストなど自作のものです。SWAG専門のSNSグループもありました。SWAGとはお土産のことです。それら自作のグッズを会場で無料交換してファン同士が交流する文化をSWAGと呼んでいる。ということがわかりました。スターウォーズをリスペクトしたものであり商用でない限り、イベント主催者も二次創作として自作グッズを容認しています。

「日本語でSWのセリフを言ってみよう」

これは参加するしかないでしょ。色々とイメージを膨らませパソコンでデザインを形にしてステッカーを作りました。ラクスルでネット注文すると安価でできました。便利な世の中です。ただこれだけじゃ何か物足りないと感じました。せっかく世界中のファンと交流できるのです。プラスアルファの工夫が欲しいと思いました。自分らしいものは何か考えました。思い浮かんだのが「日本語」です。海外のSNSを見ているとイベントはもちろんですが、日本に来ることを楽しみにしているのが伝わってきます。日本文化に触れたいのです。ファンの方ならよくご存知だと思いますがスターウォーズは日本文化に大きな影響を受けています。スターウォーズが日本文化への興味を世界に広げてくれたと言っても過言ではありません。そこで考えたのが「日本語でSWのセリフを言ってみよう」カードです。ポストカードにスターウォーズの有名なセリフ「フォースとともにあらんことを」など英語、ひらがな日本語、読み方のローマ字で書いてデザインしました。これが大成功でした。

「わたしは おまえの ちちだ」

カードを渡すと「これいい!」「こういうの欲しかった」「日本語を話したいと思ってた」と喜んでもらえました。その場でミニ日本語講座にもなりました。セリフの中で一番ウケたのが「I am your father」スターウォーズでは最も有名で衝撃的なセリフです。この言葉で物語はエピソード5から6へ、そして1へと繋がっていきます。これ以上は・・・。特に親子連れのファンは息子に向かって「watashi wa omae no chichi da」とダースベーダーの声真似で言ってくれて大笑いです。本当に楽しい交流ができました。

まだ見ぬ誰かへ

SWAGの準備には1ヶ月ほどかかりました。こんなので喜んでもらえるのか?とか、他の人のワッペンのデザインに比べてショボいなあ・・とか思いながらも世界中のファンと会えることを楽しみに時間を過ごしました。まだ見ぬ誰かのことを思いながらワクワクする気持ちが膨らんでいきました。そこにはスターウォーズという共通語があるからです。「今、現実の世界はこんなだけれどもスターウォーズ・セレブレーションには、ここには、それぞれの個性を認め合いスターウォーズという一つの世界観を楽しみ生きる姿がある。それも世界中の人たちが一つ所に集まってだ」ステージに登壇した俳優が言っていました。きっとジョージ・ルーカス本人もそこから始まった物語に携わっている人たちも、そしてファンも「まだ見ぬ誰か」のために何かをつくっているのです。その一人に自分もなれたと思えました。そして世界中の人を繋ぐことができるスターウォーズのような何かをつくりたいと思いました。たとえそれが、遠い昔、銀河系の片隅に浮かぶ小さな惑星のような存在であったとしても。

今回はここまでです。読んでいただきありがとうございました。数回に分けてスターウォーズについて語ります。お楽しみに。


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