最初はグー

, , , ,

日本人が当たり前にやっているジャンケンの掛け声がありますね。

「最初はグー!ジャンケンぽん」

今や全国どこでもほぼこのやり方です。一説には志村けんさんがテレビで始めたのが広まったとも言われています。これがあることでジャンケンの「間」ができました。野球に例えるなら初球は様子見、2球目勝負です。何を出すか投げるかの駆け引きが生まれるのです。今回は「最初はグー」とメジャーリーグについて語ります。

メジャーリーグの東京シリーズ開幕戦を見てきました。運よく抽選購入で当たりました。本当です。大谷選手はじめ日本人メジャーリーガーが5人揃って日本で開幕を迎えるという歴史的な瞬間です。現場の独特の空気と緊張感を味わうことができました。ありがたい機会をいただきました。超一流メジャーリーガーの存在感に震えました。開場に合わせて列に並びカブスのバッティング練習から目を凝らして見ていました。正確には「目を輝かせて」でしょう。パワーとスピードと、それらを生み出す身体能力と身のこなし方。私は試合前の練習を見るのが好きです。準備する姿にこそ本質が現れると思うからです。テレビ中継ではほとんど見ることができません。20年ほど前にニューヨークにメジャーを見に行ったことがあります。

当時はヤンキースに松井秀喜、マリナーズにイチローがいました。さらにアスレチックスに薮、メッツに松井稼頭央など今に繋がる日本人メジャーリーガーの系譜が輝く時代でした。NYからボストンとクーパーズタウンにも足を伸ばし、ニューアーク州の独立リーグの試合も見てきました。その時も楽しかったのが練習を見ることです。ヤンキースタジアムでマリナーズ戦を見た時に驚く光景を目にしました。メジャーは早い時間からスタンドに入れます。マリナーズの守備練習を見ていました。注目はもちろんイチローです。その前週の試合で外野フェンスをよじ登りホームランになりそうな打球をスーパーキャッチするプレイで世間を驚かせていました。「NINJA CATCH」と言われていました。そのイチローの守備練習です。見ているとヤンキーススタジアムのライトフェンスによじ登る練習を繰り返しているではありませんか。そうです。あのプレーは偶然生まれたものではないのです。練習の延長線でのプレーだったのです。1年に一度あるかないかの瞬間のためにイチローは練習を重ねていたのです。

さて今のメジャーリーガーはどんな練習をしているのでしょうか。興味津々で見ました。あくまでも個人的な印象で語っていることをご了承ください。確かにパワーとスピードは圧倒されます。平気でライナーの打球を外野スタンドに打ち込みます。その一方で練習のテンポが早く効率的に進んでいきます。余白がないのです。それは試合にも現れていました。今はルールで投球間隔が厳格に決められています。そのためのテクノロジーも導入されました。投手がサインに首をふるといったシーンはほぼありません。投手と打者の駆け引き、間合いがないのです。初球の入り方、2球目への布石といった「間」を含めた面白みがなくなっているようでした。パワーとスピードの魅力に大きくシフトしているのが今のメジャーなのでしょう。その中で頂点に立つ大谷選手はやはり、傑出した才能を持った逸材ということです。

「最初はグー!のないジャンケン」

今のメジャーを見た感想です。前置きなしにいきなり全力勝負です。昔と比べてどちらが良いというのではありません。今の時代が求めてるのです。効率優先の時代で人を惹きつけるのは何か。今は圧倒的なパワーとスピードなのでしょう。それでも日本のプロ野球は駆け引きや間、相手を揺さぶる作戦がしっかりとあります。同じスポーツでありながらベースボールと野球は違う魅力があるのです。メジャー開幕の次はプロ野球です。最初はグーのあるジャンケンを楽しみます。

今回はここまで。読んでいただきありがとうございました。また次回をお楽しみに。


PAGE TOP